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どこか知らない小さな町

ちょっとだけ離れた場所へ、ぶらっと出かける探索の旅。 それは、半分の旅。 いつもの日常を半分だけ持って、残りは 知らない世界へまぎれこむのです。 険しい山を越えて、向こうの世界へ。

ずっと雨つづきだったこちら側から、 峠の長い長いトンネルを越えると、少しずつ雲は切れ、 やがてついに青空がのぞきました。

信じられない!

ひさしぶりの乾いた風に、ふりそそぐ陽光。 午後のひざしを浴びた青い小麦畑のまんなかに、 いま、いるのです。 麦畑は風になびき、太陽の光を一心に浴びています。 このひとときを、存分に生きているのです。

初めての町を何度もくるくると回っていると、 だんだんに、地理がつかめてきました。 思っていたよりも、広く、奥行きのある町。 山のふもと、海までの間にひらけた町。 お堀のなかに、いかにも歴史のありそうな学校があったり、 昭和の初めを思わせるたたずまいの商店街を歩いたり。 かわいい古さの、パン屋さんに出会ったり。
町のあちこちに、わき水が出ています。 これはあの、霧雨と陽光を分けた峠の峰々から こんこんと湧き出してきた恵み。ずっと昔から、生活を支えてきた水。

それにしても、山々にへだてられた あちらの世界は、なんと遠くに感じられるのでしょう。 つまり、いま私たちのいるこちらの世界から見た、 私たちの本来暮らしている世界は。 ほんの1時間あまりの距離ではなく、 ずうっと遠くへ、旅に出ているような変化をおぼえます。

午後の陽が傾いた頃、 思い思いのおみやげを手に、ふたたび険しい山をめざしました。 やがて車は灰色の霧につつまれ、 ウィンドウに、ぽつぽつと水滴が落ち、 そして、なつかしい霧雨の世界へ、私たちは戻ったのでした。

そのあとも、予想どおり、ながらく私たちは霧雨の世界にいました。 それでも、山の向こうのあちらの世界では、 やはり、麦畑に陽光は降り注いでいるのだろう、 いつかはこの雨もやむのにちがいないのだと、 折にふれ言い聞かせながら、初夏の青空を待ったのでした。(マーズ;020511)

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