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小鳥の温泉へ─ゆったりの小さな旅─

小鳥の名前がついている、小さな温泉があると聞きました。 名前を舌のうえで転がしていると、 だんだんそこへ行きたくなるものです。

12月の午後、太平洋に面した市街地から、一路山へ。 川に沿って走るくねくね道の向こうからときおり、 慣れているらしい車がすっ飛ばしてきます。
あぶない、あぶない。 街から20分くらいかなと思っていたら、 行けども行けども温泉への赤い標識がつづくばかり。 もう30分、いえ40分はたっているのでは? ほんとうに、やってるのだろうか。 度重なる道路工事に不安をおぼえながらも、 ハンドルを切ります。

そしてまた、行く先々に、小さな集落があって 生活の場があることにおどろかされます。 山は深いのだと。

もういいかげん入ったと思ったら道はさらに急な登りになり、 やがて岩をうがったトンネルがありました。 これをくぐると、かえってこれなかったら? そんなことを心中でつぶやきつつ、向こう側へ。

ありました。
小鳥の名前の温泉が。 せせらぎに沿って建つ、こぢんまりとした建物。 新しくて、内部は木材をたくさん使っています。 お客はわたしひとり。 貸し切りの温泉です。

午後のひざしがぽうっと明るくて、 お湯の落ちる音だけがうっすらとひびいていて。 お風呂はせいいっぱい大きく取ってあり、 浴室全体の半分は湯船になっています。 少しぬるめの透明なお湯につかりながら、 いそがしかったこの秋からのことをつらつら思います。

向かいの山はみどり。
だれもこない。
きょうはおやすみ。
なにもかも、どうでもいい。
たまには、こんな時間をもらってもいい。

なぜか手の先が冷たい気がして、 いつもより長く浸かって、まだ未練を残しながら 温泉をあとにしました。 入れ替わりに、20代前半とおぼしき女の子ふたり。 お客さんがあったので、ちょっと、ほっとしました。

帰りは温泉のひとに別の道を教えてもらい、 ずっとはやく街に出ました。 黄金色の陽射しがそそぐ山道を ほぐれた手足で運転します。

思い切って、来てよかった。 ひとりの冒険にして、癒しの小さな旅。 秘境にある、行きつけの温泉になるでしょうか。(マーズ;011210)

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