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香港 / なつかしい旅

猫や3人で旅した初めての異国、香港。
少し遠くなってしまった春の記憶をたどってみる。 中国返還がまだちょっと遠い未来だったころ。

4日やそこらの旅にしては本当にいろいろなところを訪ねている。 ずいぶんと雑誌やなにかで知識を詰め込んでいたものだ。 海を挟んで向かい合う香港島と九龍半島の間を往き来する かなりあわただしい旅の合間に、 われわれは島の反対側一周の日帰りツアーを試みたのだった。

スタンレーからオーシャンパークへ、そして夜は電飾ぎらぎらの海上レストラン。 行く先々で小さな失敗や誤解、後悔と思いがけない発見をしながら、 ほとんど平地のない島の、人気の無い側の外周に沿って経巡る旅。 晴れた日で、湿気もそれほどでなく、ちょっとしたヴァカンスの気分だった。

けっこう高い山をバスで越えて島の反対側に出ると、もう香港とは思えない景色。 軍の施設のような行き止まりの山道でバスが停まってしまい、慌てる。 バスを降りて、少し山道を歩いた。 やっと着いたスタンレーヴィレッジでみやげ物を見たり昼の食事をとる。

スタンレーからはタクシーでオーシャンパークへ。 イルカのショーは終わっているけど入るのかと聞かれた。 はげ山のような山肌を長いロープウェーで登った記憶もある。 公園に人は余りいなかった。水族館を出ると、激しい動きの遊具があって、 私は酔いそうだったから、2人が乗るのを写真に撮りつつ見ていた。

何をかくそう、これは私の初めての海外旅行であった。

思うに、初めての海外旅行にはきっと似て非なる国はつらいものがある。 同じような顔をして漢字文化を共有していながら、決して通じない言葉。 結局英語でしか話ができない。食べているものも違う。街を歩いていれば 違和感なく溶け込める外見なのに、何かがパラレルワールドめいて違う。 全く人種の違う国なら、もっと適応できるのかもしれない。 フリーツアーだから、日々の食事にありつけるのかという疑念すら抱く。 食は香港に在りという常識は、われわれには当てはまらないのだ。

その街にいることに、私はかなり緊張していた。 治安の悪さとか日本人への悪感情とか、それだけではない不安が しじゅうあって、一度は予定をキャンセルして一人でホテルに帰って 休んだくらいだった。

だから、ある意味で私にとってはこの日はお休みだったのだ。

それでも最後の海上レストランでは、結局3人とも疲れでほとんど食欲がなくて 味見程度にしか食べられなかったのだが。 幾度となく見ていた名物風景に何か感動できないまま。 そこから夜の道をバスの後部座席で揺られ、華やかなサイトに戻ったことを うっすらと覚えている。

ホテルの部屋の窓からは、風水を守って建てられたという摩天楼のビル群が 並びそびえているのが妙な角度で見えた。 人々はまだ日本にほとんどなかった携帯電話に執心で、 歩きながら大胆に話をしている。 社会に微妙に入り組んだ英国と中国。 すれちがう若者の肌のきめ細やかさ。

そして。
街を取り囲む一触即発の雰囲気が、どうしても落ち着かせてくれない。 何が警告を発しているのか、わからないままに。 どこに向かうのか想像することすら無力に思える。

それが香港という稀な都市の引力だったのだろうか。(マーズ)

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