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Afternoon Tea

「定義:特に日本人旅行者が一度は体験したいと願う、 豪華3段重ねのケーキ、スコーン、サンドイッチがついた紅茶のセット。 有名なティルームに行くと、格のいかんに関わらず、 アフターヌーン・ティに感激している大量の日本人旅行者を見ることができる。」

と、皮肉なことも書きたくなってしまう。

そういう恥ずかしい日本人の一人が私である。
Fortnum & Masonでアフターヌーン・ティをしようとどうして思ってしまったのだろう。 今思い出しても赤面するし、考えが無かったと思う。 今までロンドンに旅行しても時間的に余裕が無く、 なんとなくアフターヌン・ティをしそびれていた。

本場のアフターヌーン・ティというものを 見たことが無かったことを残念に思う気持ちは確かにあった。 ゆったりとくつろぐ、贅沢な午後のひととき。 わりと優雅で気取ったものを想像していた。 そのあたりに間違いがあったのだろう。 なにはともあれまずはFortnum & Masonから始めようということになった。 そのつもりで、服装だって気遣ったのだった。

しかし。
行った途端、しまったと思った。 思ったが、もう後戻りはきかない。 すでに逃げて帰ることもできない。 諦めて案内を受けるしかない。
ああ。
フロアにいるのはほとんど、日本人観光客だ。 みんなラフな服装で、そろいも揃って3段トレイの同じメニューのようだ。 一見して想像していたような 優雅な午後のお茶を楽しめる雰囲気ではない。

後悔先に立たずというが、 ここでも、また失敗をしてしまった。 「しまった。しまった。」というパニックの中、 他にも選択肢があったのに、 結局、アフターヌーン・ティを注文してしまった。 (まあ、本来それが目的で来たのだったが。) 目の前には、他の日本人観光客と同じように3段重ねのトレイが。

あんなに、常日頃、お仕着せの定食やお弁当など、 他人と同じ物を食べることを苦痛に感じていたのに。 ほんとうに恥ずかしかった。 まるで修学旅行のように、みんな同じような格好で (しかも、カジュアルすぎる) 同じものを嬉しそうに食べている。

でも、私もその仲間。 きちんとした格好をしているのが、より恥ずかしさを加速する。 ユーモアのかけらも無い、絶体絶命の状況で、 マーズがお店の人にこう聞いた。 「毎日どれくらいの日本人が来るの?」 彼女は笑いながら、 「午後の時間帯はフロアのほとんどが日本人ね。」と。

私達も一緒になってにやりと笑う。 こんな時に、 自分を笑えるというのは、マーズのすごいとこだ。 大切な心の余裕だし、それこそ上等のユーモア感覚だと、 私は思う。

そう思う目の端っこに、 フラッシュが光る。 だれかが、記念撮影をしている。 もう、笑っている場合ではなくて。。。 フラッシュが光るたびに、目の前が真っ暗になるようだ。 そして、フロアの真中の席にいたカップルが、 フロア係の初老の男性に、何事かを頼んでいる。 男性はカメラを受け取り、カップルの記念写真をとって上げていた。 お店もお店だが。

「農協月へ行く」(筒井康隆/新潮文庫)を思い出した。 「それほどはひどくないでしょ?」そう思うでしょ? いや、ダメージは、初めてそれを読んだ時と変わらないくらい大きく、 ほんとうに悪夢のような時間だったのだ。  (シィアル)

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