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「 き ゅ ー」 の 学 習

PostOfficeには、ちょっとした文具コーナーもあって、私たちのお気に入りの場所。 その日は、ホテルでの朝食を済ませると、意気揚々と、ロンドンで手に入れた数々の 戦利品の詰まった箱を抱え、初めての郵送に挑んだ。 PostOfficeには、確かに長い列があった。 「朝から皆さん、大変だなぁ」、でも 私たちは幸い、空いてる小包郵送の窓口。 いそいそと箱を持って、いざ窓口へ。

突然、みんなが、「キュー」。 「きゅー?」状況判断の甘かった私たちは、そのまま窓口で待機。 すぐに、窓口に係の人がやってきた、何か言ってる、そして「キュー」。 きゅーだ。キューってなに?九?球?Q?灸?キューってなに?? ??? わからない。

でも。 それはわからないはずだ。 私には理解できないシステムだったのだ。

順番を割り込むつもりは無かった。 ずるをしているわけでもない。 それは、言葉の通じないイギリスの人たちにもわかっていたはずだ。 いらだたしげな響きが「キュー」の大合唱に含まれていなかったとは言わない。 けれど、何といっても、その窓口で、ぽつんと待っていても、永遠に、多分、 (きっと、ほんとうに永遠であろう、)私たちの番は来ないのだから。 だから、愚かさにあきれはしただろうけど、ずるをしているとは、誰も思ってなかっただろう。 (この辺の感想・見解はマーズと分かれる)

なぜ、理解できなかったのか。 各窓口ごとに並んでいたら、すぐに列の後ろに並んだだろう。 けれど、それぞれ異なる窓口に用のある人が、窓口を、用事の違いを 越えて一列に並んでいるのだ。 (事実、記念切手か記念硬貨の発売日で、 それでみんな長蛇の列しているのかと、 のんきな私は、ちょっと本気で思った。) よく見ると係の人はカウンターの内側に2〜3人しかいない。 窓口は8つやそこらはあった。 つまり、お客さんは自分の番が来ると、自分の用のある窓口に行く。 すると、郵便局の人も、そのお客さんの行った窓口に移ってくるのだ。 お客さんが移動するたびに、係の人も移動する。 小包の窓口は左端だった。 切手とかは、右端の方。端から端へ、係の人は大移動してきた。

やっぱり、このキュー制度は今でも理解を超えている。 あの時も密かに可笑しかった。しかし、つらい状況だったので、笑いは苦かった。 今となれば。密かに滑稽なシステムと、キューという言葉が強引なワープロよろしく、 無理矢理漢字変換されていった瞬間を余裕で笑える。 いつだって、カウンターの中で行ったりきたりする係の人を思うと、どうしても可笑しくなる。 1日それを繰り返せば、結構運動量があるんじゃないかと。

でも、今日これを書きながら、冷静に考えると、やっぱりイギリス功利主義の国。 ミルやらベンサムの国だ。(意味不明) 冷静に考えると、やっぱり合理的で、効率的かなあ。 窓口が8つあっても、ほとんどお客の来ない窓口もあるだろうし、 そこに係を貼り付けておくのは無駄だし。 自分より後から来た人がすいすいと用事が終わって、 自分だけが不当(としばしば感じられるあの瞬間)に待たされる不快感&不安感も嫌だし。 それがないのだから、列は長いが、軽快だ。

やっぱり、理解は超えるが(どうしても、カウンタの中で右へ左へ移動する姿が面白可笑しいのだ)、 明快で合理的な制度ではある。 もちろん、これを教訓にどこでも並ぶ。じっと順番を待つ。 待つことに不公平が無いから、ストレスは感じられない。 やはり、功利的だ。

[補足1]「キュー」ともっとも力強く、根気強く言い続けた初老の紳士は、 私たちが最後尾にやっとつくと、 自分の前に私たちを入れてくれた。 別に親切でも、レディファーストでもない。 彼が来る前から私たちはPostOfficeでキュー攻撃を受けていたのだ。 彼は正しい順番で並んだだけ。 私はそういうささやかで生真面目な正しさにイギリスという国の秩序を感じた。 さすがやはり不文憲法の国だ。 個人の性格もあるだろうけど、その紳士の背後にイギリス国旗がはためいて見えた。

[補足2] 魔法の箱発見!!! あんなに苦労して順番が来たのに、 現金の持ち合わせが無くて、すぐには送れなかった。 何でも、どこでも、どんな少額でもカードが使える国なので、油断していた。 ホテルまで戻らねばならないのか。気が重い。 けれど、さすがカードの国。 いたるところにカードディスペンサーがある。 郵便局の外壁。大きなビルの壁。駅。町角。 気をつけてみるとどこかしこにあるのだ。 それまで、クレジットカードでキャッシングをしたことはなかった。 でも、ホテルに戻るの面倒臭さで、恐る恐るやってみる。 すると、魔法のように壁の中からお金が湧いてきたのだ。 これは魔法?魔法の箱?金鉱でも掘り当てたの? キュー・パニックで動揺する頭はファンタジーの世界を漂い始める。 だって、日本でもやったこと無いのに、このはるかかなたのイギリスの地で、 いきなりポンド建てで、するすると欲しいだけのお金が出て来るのだ。 感動しました。はい。

もちろんこのキュー事件以後、現金やら、トラベラーズチェックの持ち合わせが 無くなるたびに、町の角角にある、魔法の箱にお世話になった。

本当にこの時の旅行では多くのことを学んだ。 まず、何はなくとも「きゅー」である。 次は、キャッシングの便利さ。 気をつけなければ幾らでもお金は湧いて出てくるので (キャッシング限度額いっぱい、持ってるカードの数だけ)、 自分で歯止めがかけられるかどうかということが肝腎要の注意点。 湧き出ずるポンドの泉を持つと、どうしてもルーズに使いすぎがちになる。 何割か増しで、気も大きくなったりするしね。 そこさえ気をつければ、 現金で大金をを持ち歩くより安全だ。トラベラーズチェックは安全だが、 結構、使うのに面倒だ。 (手数料も要るしね。) 日本円をポンドに換えるのだって、場所を選ばないと手数料やら、 その日、その場所のレートで目に見えて、目減りするし。 その点、ずっと便利で、すぐ返せばカードでキャッシングをした利子もそれほど負担ではない。 (とあの時は感じた。)支払日まで、為替レートの動きにちょっとどきどきするけど。 (ポンド建てのキャッシングも払う時は円建てだから。)

結局。 判断力と自制心。それが私の、新たな旅の課題である。(シィアル)

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