HOME:お天気猫や // シャム猫亭*TOP // Tea Rose Cafe
多分、祖母の庭のほとんどを占める菊のためだけに 春があったのだと思う。 土を耕し、肥料を入れ、菊の苗を整える。 祖母の庭には春の花を準備する時間があまりなかったのだろう。 薔薇や、苺の白い花や、若干の花の思い出はあるのだが。
祖母の庭が私の記憶の中で色づいてくるのが初夏から梅雨にかけて。 菖蒲やら紫陽花やら、 幼い私にとって渋めの花が咲く。
そして夏。
手をかけているわけでもないのに、
毎年毎年、
力強く真紅の花が咲く。
カンナ、ダリア。
力強く天空に向かってずんずん伸びて行く。
タチアオイ。
あの時、タチアオイの花を見あげながら、私は何を思ったのだろう。 タチアオイを見上げながら、青い空に吸い込まれそうになりながら。 きれいに作られた朝顔が大輪の花を開く早朝。 真夏だというのに、夜明け特有の冷たいような緊張感。 いつも朝顔が咲いている庭。 夕闇に溶け込まずに、白く際立つ夕顔。 夏の時間は今よりずっと長くて、 無限にも近い夏休みを過ごす。
永遠にも思えた夏の時間にも 常に終わりはあり、 満ち足りた子どもの時間も 祖母との思い出と共に終わる。
夏の花が咲く中、祖母は旅立ち、 お別れにと祖母の友人が差し出した雨に濡れた紫陽花が 悲しみの中、何か暖かなものを垣間見せてくれた。
夏の花を見るたびに…
byシィアル;1999/06/26