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空飛ぶ珈琲

“tea or caffe?”と問われれば“caffe,please.”で済みますが、「お飲物をお持ち致しました。コーヒー、コンソメスープ、林檎ジュース、冷たいウーロン茶、…」となると「ああ、コーヒー、コーヒー、コーヒーお願いしますっ!」と、無闇に慌ててしまいます。

窓の下は海岸線。町。大きな光る街、おそらく◯◯市、うねる河。たぶん△△河。山…山は上からでは分らない。 こんな楽しみはやっぱりコーヒーと共に。ウーロン茶では今ひとつ。 雲が厚くて地上が見えなければ、雲海の彼方に吹き上げる不思議な雲の形を見て、やっぱりコーヒーを頂きながら風の動きを考えます。

先日、実家から久しぶりに飛行機に乗りました。 昼の便、西から東へ向かう飛行機、雨雲の去った直後。条件良し。 さあ、左側の窓から何が見えるでしょう? 雨の名残りの薄雲が、暗い山並の上に棚引いています。 その上に南からの日射しをうけて、飛行機の影。 そしてその周りをぐるりと囲む、鮮やかな虹の輪。それも二重。 完全無欠のブロッケン現象です。 下の雲が厚いと白く光って虹が薄れるので、これはもう絶妙の条件。 窓の下に二重の虹の輪を引き連れて、ここで悠々とコーヒーを頂きます。

ただ、飛行機は雲より早いので、出発地は晴れていてもあっというまに雨雲に突っ込んでしまう事も多いです。 エアポケットに入って機体がすとーんと落ちる時、一瞬自由落下による無重力状態になりますよね。 コーヒーが本当に空を飛びます。 宙に浮く、というほうが正しいのか。兎に角、いまだ機内サービスには改良の余地がある、とこれも必ず出されるオシボリでそこいらじゅう飛び散ったコーヒーをせっせと拭くのでした。

(ナルシア)

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