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■ ファンタジー特集

-- 『指輪物語』(その10) --

『妖精国の騎士』(その2)

アルフヘイム(妖精国)もすでにコミックス42巻を数える。 少女漫画としては異例の長編である。 ほとんど予約販売に近い常連の買い手がいるから 商業誌での連載も続いているのだろう。 第一巻が出たのは昭和62年・1987年、なんと15年前。 ついに星香の本命が始まったな、とわくわくしたものである。 おそらくこの物語を愛する星香ファンは、 私がそうであるように、初版本ばかり順繰りにそろえている のにちがいない。コミックスになるとき、恒例の加筆があるので、 連載そのものとは多少異なっているが、 まあ、比較のために本誌でもそろえているという人も いるのかもしれない。

いまさらながら、作家渾身のこの大作(代表作となるだろう)が こうしてフィナーレを迎えつつある今このとき、 ここにいられることは幸いと思う。

光と闇の闘い。
テーマは非常にはっきりしていて、「指輪物語」や 「ゲド戦記」など、ファンタジーの金字塔から 幼き日に書き手の魂が受けた恩寵が、華麗に花開いてゆく。 その種は時を待ち、いくつものファンタジー作品を世に出した後に、 ついにアルフヘイムの扉を開いたのだ。 少女漫画という大地に見事に咲いたアルスター(花の名)!

光の剣ルシリスの乙女となるアルトディアスの王女ローゼリィ、 銀の剣シルヴァンの騎士(銀月の騎士)は、双子の兄のローラント、 そして陽の剣ソレスの守り手となる魔法使いは、 グラーン(キリアン)の王子アーサー。 彼ら三人とも、生れた国を魔に奪われながら、 愛と信頼のなす光、伝説の魔法によって地上の楽園を築くまでの物語。 「三剣物語」と作者が呼ぶゆえんである。

人間たちの世界を征服せんとする闇の魔物との死闘、 妖精族(エルフ)、魔法使いたち。 人物相関図を数年前に作ったのだが、今どこにあるのか わからなくなってしまった。 少女漫画とはいっても、ときに酸鼻をきわめる場面あり、 かと思えば、ローゼリィ(ローリィ)とアーサーの運命の恋も。

三人はときに離れた場所で闘う。 なにしろ戦乱の時代である。彼らの生活は戦闘に明け暮れる。 場面の転換で、たとえばローリィがアーサーを想う、その 心の呼びかけが、アーサーにぱしっと伝わり場面が替わる、 という転換方法が三人の間でよく起こるのは少女漫画の醍醐味。 彼らは魔法が使えるので、実際メッセージを送ることもある。 お楽しみはまだまだいろいろあって、ふだん戦士の格好しかしてない ローリィのドレスアップお姫様ルックとか、 異様に美しくて残酷なサラサラ長髪の闇の皇子とか、 自慢の妹を元敵のアーサーに取られて悔しい兄王子とか、 他のメディアではこれほど効果的には表現できない美学が たくさんあるのも人気の一因だろう。 それらは、長くファンをやっていればいるほど、 ツボにはまってくる星香らしさでもある。 (闇の皇子に関しては、ファンの方には申し訳ないが、 「あ奴、どうしてくれよう」と、その末路を思い描いている。)

ずらっと並べて見ると、表紙の絢爛豪華さは、さすが星香ワールド! なかでも18巻の表紙は、 夕の星エイリエルと明けの星エアリアンの妖精カップルで、 主人公ローリィのお師匠でもあるエアリアンは、私のお気に入り。 ローゼリィの養い親である緑の森の妖精王、 ルシアン・エルフェルムの殿 (またこの方のことを語りだすと長くなるのでカット)の側近でもあり、 幼い頃、傷ついたローリィが仙境で育てられた時期に 深い信頼関係を築いたエルフである。 (しかし、お互い顔を合わせば口が悪い)

物語は佳境に入る。 第一の主人公はローゼリィだが、 作者の思い入れの深い魔法使いアーサーの、 最後の闘いに向けたさらなる『魔法的』活躍を期待している。

マーズ , 2002/04/09(Tuesday)

『妖精国の騎士』 著者:中山星香 / 出版社:秋田書店 プリンセスコミックス・文庫版も刊行


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