「タイムの小径への道」
 
生い茂るハーブの合間の小道を歩くと、 
衣服や手に触れた枝葉から立ち上る 
爽やかな香りの風に包まれます。 

やっぱりハーブを育てるからには、夢ですね、 
「ハーブの香る小径」! 
でもいざお家に作ろう、と思っても、 
なかなか条件ぴったりの場所がありません。 
 

以前住んでいたのは二階だったので、 
屋根のない吹き抜けの階段の踊り場から階段沿いに
玄関まで プランターを並べて、触ると香るハーブを植え、 
ちょいちょい触りながら歩きました。 
さらさら緑の揺れる好い匂いの通路は、 
近所の虎猫と下の階の五才の男の子の 
お気に入りの場所になりました。 
 

さて、引越して来たこの家ですが、 
植木で囲われた小さな庭は全面芝生張りで、 
通り道を作るような場所がありません。 
ぺったりコンクリートで塗られている玄関アプローチには 
一面にコンテナを並べ、花をたくさん植えました。 
北側は屋根のあるカーポート、日があたらないし、 
第一植え込みなんか作ったら車を入れる時邪魔です。 
どこかいい場所ないかなあ、と考えたあげく 
思い付いたのが。 

玄関と裏をつなぐ東側の通路。 
東向き、といったらハーブにもってこいのように聞こえますが、 
実は東側はずっと塀で、その上に厚く高く育った 
カイヅカイブキの生け垣が聳え立ち、 
日光はほとんどあたらないように見えます。 
本当にただの通り抜けのための通路のようです。 
主なハーブの必須の生育条件といったら、 
まず第一に陽当たりが良い事、それから水はけでしょう? 
屋根のある壁沿いで雨は当らないので、 
乾燥好きの地中海ハーブには良いかもしれないけど、 
陽当たりがねえ… 
と悩んでいたのですが、ある日、気が付いた事がありました。 

雑草が生えている。 
しかも、陽当たりの良い原っぱに生えるような草まで。 
あれ?と思って観察してみると、正午前後一時間ずつくらい、 
光が真上から落ちて来ていたのです。 
直射日光が当る時間はそれだけですが、 
陰になっても壁が真っ白なので通路はかなり明るいようです。 
もしかしていけるかな? 
ハーブはもともと道端に生えているようなものですから、 
鑑賞用の花とは違って、少々環境が悪くとも 
頑張るかもしれません。試してみる価値はあります。 
プランターを並べるか、高く土を盛ってブロックで 
花壇風にしたらハーブがこぼれ落ちるように伸びて 
見栄えがいいし、高く植えたら陽当たり水はけとも 
かなり良くなるかも、とも思いましたが、 
なにせ狭い通路ですから、向こう脛ぶつけたら痛い。 
思い切って地植えにしてみる事にしました。 

飾り砂利をどけて、鍬で赤土の地面を20センチ程掘り、 
腐葉土(肥料になる)、赤玉土(水持ちを良くする)、 
軽石(水はけをよくする)、化成肥料をバケツで 
もとの土の一部と良く混ぜ、ふわふわの培養土を作ります。 
地植えといっても、この場合は土を掘ってプランターを 
作ったみたいなものですね。穴の底に水はけ用のゴロ石を敷き、 
土を入れてハーブを植え付けます。 
土は時間が経つとどんどん沈んでへこむので、 
根元に山盛りになるくらい載せておきます。 
大きくなるので、株は30センチくらい離して植えます。 

植つけた苗が小さいうちは、犬や猫などに荒らされないように 
支柱の針金などをU字型に曲げたものを地面に挿して、 
苗を保護します。 

そうやって去年の秋植えつけた通路のハーブ、 
今どうなっていると思います? 
陽当たりの良い南向きの庭のハーブ達が、 
冬の間葉を枯らしてじっと冬の寒さに耐える中、 
通路のハーブはずっと青々とした葉をつけていました。 
壁際で、風があたらないせいでしょうか。 
そして春になって、家中で一番最初に芽吹いて、
今力強く伸び始めています。 

陽の当る玄関側にはピンクの花の咲く
ローズゼラニュームを植え、
そこから白い壁に沿って、
銀色の葉の美しいサントリナ(コットンラヴェンダー)、 
斑入り葉の可愛いオレンジタイム、 
匍匐性で香り高いレモンタイム、 
こんもり茂るコモンタイム、 
優しい葉色のコモンセージ、 
優雅な香りのスィートマージョラム、 
小花も可愛いオレガノ、 
立性のローズマリー。 
いずれも緑色の風合いが素敵で、 
服の裾が触れるとぱっと香りが立ちます。 
上手くいったようので、春になってから続きを植えました。 
壁のコンセント隠しになるように、背の高くなるフェンネル、 
紫の花の美しい、爽やかな香りのヒソップ、 
花がなくても葉の香るラヴェンダー。 
ラヴェンダーは湿気に弱いので、土の軽石を多くし、 
出来るだけ高畝にして水はけを良くします。 

乾燥地の好きなハーブの地植えとはいえ、 
壁際は雨がかからないので水やりは必要です。 
湿った場所だったら、ミントの小道も素敵ですね。 
ミント類は根が横に這って手におえなくなるので、 
土に植える時は株毎に掘った穴の中に不織布を敷いて 
土を入れるか、鉢を埋めて余計な所に生えないようにします。 

挿し木で増やした苗や、春に去年育った大株を 
株分けしたものの、もう植える場所がない、とお困りの皆様、 
北向きのベランダとか家の裏側とか、 
あまり条件が良くなさそうな所でも案外植物が育つ事がありますよ。 
枯れてもともと、と一度試してみて下さい。 
ただし、忘れてしまうと本当に枯れてしまいますので御注意。 
それから季節によって陽当たり、風通しが変わるのも注意。 
全然気にも留めていなかったような隅っこが、 
大好きな場所に生まれ変わるかもしれません。 
 

綺麗な花の咲き誇る、陽の降り注ぐ表から見たら 
ひっそりと薄暗いような小道に、 
様々な色合い様々な形の小さな潅木のボーダーが続いています。 
表の花を見ていた女の子に、小道の秘密を教えました。 

ほら、この小さい葉っぱに触ってみて。 
 

次の週、女の子は小さな弟を連れて来て、 
小道にしゃがんでその秘密を囁きました。 

このはっぱ、ほらこれ。不思議だよお、 
すっごくいいにおいがするよ。 
はっぱなのに、レモンみたい。 
さわってみて。ほら。 
 

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