ミントの精  


暑い日のハーブはなんといっても
アイス・ミントティー。
全てのハーブが煮え立つような熱気の中で
ぐったりとしている中、さしもの丈夫なミントも
淡いピンクの花穂をつけて見た目は涼しげですが
下の方の葉っぱは枯れ上がってきています。
でもうちの庭のこぼれミントは
ちゃっかり日陰にはびこって雑草と化しています。
えい抜いてやる抜いてやる。
ああ、涼しい香り、これをお茶にしましょう。

お茶にしておいしいのはペパーミント、
スペアミント、アップルミントなど。
食用ミントの葉をポットにいっぱいにつめて熱湯を注ぎ、
4〜5分おくとそれは綺麗な浅緑色のお茶になります。
氷をいっぱい詰めたグラスにざっと濃いミントティーを注ぎます。

あれ?透き通った黄色の冷たいお茶の中に
ひらひら白い粉が舞っています。
透明な氷の周りから生まれる雪のよう。

あ、これ、ミントの精だ!

冥府の王ハデスに愛され、
怒った王妃ペルセポネに惨殺された
ギリシア神話のニンフは哀れんだハデスによって
清々しい香りの草に変えられました。
ニンフの名はメンタ、
香り高い薄荷草「Mentha」は
香成分 Mentholをたくさん含んでいます。
グラスの中の細かな雪は
ミントの香成分 メントールが急激に冷やされて
結晶となって析出した姿です。

このメントールの結晶は透き通った針の形の
水晶のようで、「ハッカ脳」と呼ばれて
北海道北見のハッカ農家のおみやげになっています。



私はこの結晶に学生時代の実験室で出会っています。
ぼんやり実験の反応待ちをしていると、
白衣を着た友人がシャーレの蓋をあけて
中の透明な結晶を爪で小さく折り取りました。
何をするのかと見ていたら
愛飲しているタバコのフィルターにそのかけらを差し込み、
軽くライターの炎であぶって溶かし
それからタバコの先端に火を付けて
おもむろに一口。
いきなりむせる友人。
「か、辛い!」
そりゃ、分量が多すぎたんですよ。
彼女はいつもより効くお手製のメンソールたばこを
作ろうとしたのでした。



残ったミントティーは密閉容器に移して冷蔵庫で冷やします。
長時間おくと香りが飛んでいくので
その日のうちに使い切ります。
カルピスを割ってミントカルピス、
ウィスキーを割ってミント割り、
冷やす前に砂糖を溶かして甘いミントシロップにして
ミルク割り、果物のシロップ漬け、
おしぼりに浸して使うと気持ちが良いし、
余ったらお風呂にいれてさっぱりミント風呂。



おうちに元気なミントがなかったり
あんまり好みの香りじゃなくっても
ドライにしたミントの葉や
エッセンシャルオイルを持っていれば大丈夫。
エッセンシャルオイルは高価だし手に入りにくいと言う方、
実は御近所のドラッグストアでいいものが手に入りますよ。

ドラッグストアでもあんまり人気のないコーナー、
エタノールやホウ酸等の日本薬局方品を並べている棚で
小さな箱を探して下さい。
「日本薬局方 ハッカ油」
これがジャパニーズ・ミントのエッセンシャルオイル、
お値段はハーブショップで購入する
他のエッセンシャルオイルの1/7以下、
嬌味嬌臭剤として調剤に使われるものですから
もちろんお料理にもお風呂にもOK。
私は胸焼けのする時に本来の目的で使います。
冷水にハッカ油1滴垂らしてよくかきまぜ、
少しずつ飲むとすっとして吐気がとまります。

ジャパニーズ・ミント、和製ハッカの香りは
普段私達が使うペパーミントなどと比べると
かなり甘くておいしそうな香りです。
たくさんあるのでだぶだぶ使ってしまいそうですが、
れっきとした高濃度の精油ですので
他のハーブのエッセンシャルオイルと同じ様に
慎重に扱って下さい。

ちょっぴり残ったミント水と日本のミントの精を
お風呂に垂らして、清涼感に浸りながら目を閉じます。
ああ、涼しいミントグリーンの風のふく北海道に行きたいな。



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