真夏の夜の夢

十六世紀に生まれたシェイクスピア作品には、
当時の英国の生活で馴染み深く、
現代の私達にも良く知られた花や香草が多数登場します。

数多い名作の中でも特に人々に最も愛されている作品の一つ、
幻想的で軽快な喜劇「真夏の夜の夢(Midsummer Night's Dream)」の舞台は
妖精の支配する緑深い森の中。
「真夏の夜」だから七月か八月のお話?いいえ、
実はMidsummerは夏至の事、
Midsummer Nightは一年で一番短い夜。
日本は蒸し暑い梅雨ですが、英国では最も心地よい美しい季節。

タイムのしとね、すいかずらと野薔薇の天蓋。
妖精王オーベロンの妃、ティターニアの
お気に入りの憩い場所をお家に作ってみませんか。
 


タイムのしとね

*― クリーピングタイム  serpyllm ―*

「タイムの生えているところは妖精のおきにいりの場所」という言葉はよく耳にす
る言い回しですが、ハーブを実際に育て始めて私は心配になりました。
だって、タイムって、育つと茎が堅く木質化して低い潅木になりますよね。
そこで妖精が踊ったら‥足が痛いのではなかろうか。
妖精はタイムを踏まずに宙を飛んでいるのでしょうか?
でも、この香りを立てるにはやっぱり叢を蹴らなければ。
やがて、謎は解けました。
妖精が集まるのは「立麝香草」のthymeではなくてserpyllm、
野生のクリーピング・タイムらしいのです。
成る程、クリーピングタイムなら芝生のように拡がるから上で休んでも踊っても大丈夫。
と、いう訳で地にはクリーピング・タイムを植えましょう。
伸ばした茎が地面に触れるとそこから根を出して、地表を覆います。
庭のグラウンド・カバーに。
うちは今の所植える場所がないので、高さのあるフラワーコンテナに
一時植えています。
伸びた枝がコンテナからあふれおちて、爽やかな緑のベールを作っています。
ハンギングの寄せ植えにもぴったり。花がつくとまた可愛い。
 
 


すいかずらと野薔薇の天蓋

*― すいかずら  honey suckle ―*

スイカズラはよく薮などでつるを木に絡ませて自生しているのをよく見かけます。
白い花が時間が経つと黄色くなり、二色の花が咲いているようなので、
ついた名前が金銀花。薬用酒などにし、疲労回復の効能などがあるそうです。
実の所、以前はそう特に気にも止めない雑草だったのですが、
今は大のお気に入りです。そのきっかけはアメリカでの事。
私が一時暮らしていた米南部の町は、住宅が樹に囲まれているのが普通で、
鬱蒼とした森の中に人が暮らす風情の土地でした。
ある初夏の夕暮れ、その森の中をそれは佳い香りが漂ってきました。
クチナシ?バラ?いえもっと清廉で軽やかな、‥香りを辿って行きついたのは
一本の電柱に斜めにかかるケーブル──に絡まり、覆い、這い、伸び上がる、
太さが私一人では手を伸ばしても抱えきれない、
そして高さは5メートルはあろうかという、すいかずらの群生だったのです。
その斜めの太い緑の柱にはびっしりと白と黄の花が咲き、
鮮烈な素晴らしい香りが周囲に広がっています。
それ以来雑草生い茂る道端の空き地も、立ち木に絡むスイカズラを発見すれば、
そこは私の秘密の庭になります。
ハニーサックル(honey suckle)という名は日本名と同じく、
花の根元に蜜があって吸うと甘いからでしょうね。
道にはみ出した白い蕾みの付いたつるを貰って水に挿しておくと、
夕方部屋に素敵な香りが広がります。
 
 
 

*― 野バラ  wild rose ―*

南房総の、とある廃屋の裏の小道を通り抜けたとき、
2メートルばかりの野バラとそれに絡むスイカズラの、豪奢な天蓋を発見。
一面に咲きこぼれる純白の花が妖精の女王にふさわしい‥
といいたいところですが、どうも「真夏の夜の夢」の薔薇はエゲランタインという
紅色の花を咲かせる野バラだそうです。
色彩豊かな舞台で繰り広げられるのは、
人間と妖精の織り成す一夜の上を下への珍騒動。
野バラの咲く薮を覚えておくと、晩秋になって綺麗な真っ赤な実の付いた
リースにぴったりの枝が手に入ります。
トゲに御注意。


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