*- 不思議な猫話 -*


 
幻 の 猫

春頃からマオの食は絶好調で、夏場に入っても衰えることを知らなかった。 
今まで、朝開けた缶詰の残りは決して食べようとしなかったが、夏ばて防止のためか、もりもり食べて、翌朝には洗ったようにきれいになっている。 
ぱりぱりの入ったお皿も、空っぽ。 
よくよくおなかが空いているのか、ほんとによく食べている。 
台所のかつお節やパン、残飯。
あらゆる物を。

そうではなかった。
リリだ。リリだった。
リリが2階の私の部屋にあがってきて、ちょこんと座っている。
当然、マオのお皿も空っぽ。空腹に耐え兼ねたのだ。
かわいそうなことにリリは、お座敷犬にありがちな運動不足で太りすぎて、アトピーになってしまった。そのため、さらにかわいそうなことに、今ダイエットの真っ最中である。だから、おなかが空くと猫ごはんを食べに、そっと二階に上がってくることが以前にもあった。
マオではなく、ずっとリリだったのだ。あれだけ食べているにしては、マオが太らなかったはずだ。
マオとリリ、両者の為に、家族に厳重に申し入れたら、マオが台所を漁ることを逆に注意されてしまった。
けれど。あれだけ言ったのに。 事態は改善されていなかった。
あいかわらず、リリはいつのまにかやってきている。お皿はぴかぴかだ。

ある日のこと。 
遊びにやってきたマーズが階段で 「キャー、何これ?」と叫び声をあげた。
どんどんどん、と大きな音もする。
「白い猫が」マーズが言った。
「え?」
「白い猫がマオのごはん食べて、転げ落ちそうになりながら階段を逃げていった。」

お皿を空っぽにしていた犯人は白い猫だったのだ。
リリではなく。
しかも。 台所を漁っていたのも白い猫だったのだ。
マオではなく。 
けれど、マーズの証言以外、誰もその白い猫を見たものはいない。 
ああ、そういえばと、あやふやな記憶の向こうに かすかに白い猫らしき猫が見える気がする。 

どうやら、白い猫は私たちの知らないうちにちゃっかりとうちの周辺に住んでいるようで、気がつくと、朝昼晩を問わず、マオのごはんは確実に空っぽになっている。ひどい時には、私の朝食のパンが食い荒らされていることもあった。

春以降、ずっと白い猫がうちのどこかに住んでいる。
誰も見たことがないけれど。
どこにいるのかはわからないけれど。
白い猫は可哀想でもあるが、当事者たちにとっては、困った事態でもある。

さて、どうしたものか。

(by シィアル)
 


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